コスタリカvsカナダ W杯予選 観戦日記

サッカー

3月24日コスタリカ代表とカナダ代表の試合を観に行った。

2022カタールW杯予選が世界各地で行われており、日本代表も出場が決まり一安心といったところだが、コスタリカを含む北中米・カリブ海予選も白熱している。出場枠は「3.5枠」。3位までが出場権を獲得し、4位の国はオセアニアとの大陸間プレーオフに回る。

先週のコスタリカとカナダの試合は、カナダが勝てば36年ぶり2度目のW杯出場が決まる、カナダにとっては歴史的な日になるかもしれない試合。一方コスタリカにとってはメキシコやパナマとの3位・4位争いが熾烈を極める一つも負けられない中での試合だった。

カナダ在住の叔母が私がコスタリカにいるならとチケットを取ってくれ、夫婦でコスタリカまで旅行に来てくれたおかげで観戦に行くことができた。叔母が手配したコスタリカのツアー会社の方がチケットが販売される瞬間までパソコンの前で待機し、すぐに買ってくれたおかげで3万5,000人収容分が即完売したチケットを手に入れることができ、ガイドさんには感謝しかない。代表戦が行われるナショナルスタジアムはまだ建てられてから10年ほどのようで、圧倒されるデカさだった。

@Estadio Nacional de Costa Rica

その日一日はサンホセ(首都)にあるスタジアムの周辺で過ごしていたが、街の様子は午前中から代表戦への熱が沸々と湧いていた。老若男女関わらずほとんどの人がコスタリカ代表の赤いユニフォームを身にまとい、どこか楽しげでワクワクしているように見えた。レストランに入れば店員さんも全員ユニフォームを着ている。コスタリカのサッカー人気が眩しくてたまらない。タクシーの運転手は私たちがカナダを応援すると言うと大袈裟に残念がってみせたが、今日はコスタリカが勝ってみんなで酒をたくさん飲むんだと興奮混じりに話していた。

純粋に、本当に純粋に、すごい。サッカーの代表戦があるというだけのその一日が、多くの(ほとんど全てと言っても過言でないかもしれない)国民の楽しみ、興奮、活力、愛や熱を生み出しているのが見えなくとも見える。スタジアムの近くにいたことも大きな要因かもしれないが、これほどみんながサッカーに注目し、楽しみにしている空気が街に溢れていることに感動したしあまり感じたことのなかった心地良さだった。

キックオフは夜の8時だったのだが、スタジアム周辺には夕方5時前からたくさんのコスタリカサポーターで賑わっていた。音楽や爆竹でお祭り騒ぎ。その空間にいるだけでも興奮してくる。3万人以上が観戦するとあってとにかく人混みがすごくて入場するのが大変だった。入り口でチケットを見せながらどこから入れば良いのか聞いてみるが、周りの騒音も相まってバイトであろうスタッフとの会話が上手くいかない。叔母の夫(カナダ人の方)が聞いてくれているのだが、どうも英語が通じないようで、ああ、私のスペイン語がもっと上達していれば、、と情けなく思いながら叔母と3人であたふたしていると、近くにいたコスタリカの男性(おそらく20代後半くらい)がおもむろに我々に向けて自己紹介を始め、通訳を買って出てくれた。その方のそれはそれは流暢な英語とこれぞコスタリカ人といった親切心のかたまりのような人柄のおかげでスタッフに誘導されながらなんとかスタジアムの中に入ることができた。ただ入ってからもなかなか大変だった。何しろスタジアムが広いし人が多い(くどいですが)。座席近くのゲートに到着した後は、中にいるスタッフに案内役が代わったのだが、このスタッフがめちゃめちゃいい加減だった(笑)一応座席まで連れて行かれたのだが、チケットに書いてある数字やアルファベットとその座席に書かれている数字が違うことは私たちにも明らかだった。叔母夫婦がその旨を伝えるが、観客たちの盛り上がりで騒がしいのをいいことに、聞こえないようなふりをして、ここだから!!ともう自分の仕事は終わったというような感じでそのスタッフはさっさといなくなってしまった。スタッフは当てにならないし、客席もどんどん埋まって行く中3人で席を探していると、またしてもどこからともなく現れたコスタリカ人の男性(座席はしっかりコスタリカサポーター側だった)が「チケットを見せて。」と言って助け舟を出してくれた。チケットを見るやその男性がしっかり正しい席まで連れて行ってくれた。もちろん先ほどのスタッフに言われた場所とは全く違う場所であった。コスタリカの人はどんな人かと聞かれれば、おおらかでとても親切な人たちだと答えるが、あまりそう思い込みすぎるのも良くないということもたまに学ぶ。

コスタリカ側ではあったもののようやく座席にたどり着き、キックオフを待ちながら会場の雰囲気に圧倒される。観客たちの大合唱に打ち上がる花火、全身を震わせてくるブブゼラの音。いつもテレビで観るばかりだった大熱狂のなかにいる自分が夢みたいだった。サッカー観戦なんて初めてだという叔母夫婦もとても楽しそうにしていて嬉しかった。余談だが私がサッカーをしていて最も嬉しかった時は、中学で仲良くしていた子が高校に入って女子サッカー部に選手として入部したことだった。その子は中学ではバスケ部で、よく一緒にバスケをして遊んだりしたのだが、授業や球技大会でサッカーをした時にすごく楽しそうにやってくれてたしサッカーをする私をカッコいいカッコいいといつも褒めてくれた。そんな友達が少なからず私の影響によって高校からサッカーを始めてくれたのが嬉しくてたまらなかったし、私がサッカーをやってきたことの価値を生み出してくれた。つまり何が言いたいかというと、今回も私がいるからとわざわざコスタリカまで来てくれ、初めての観戦を大興奮で楽しんでくれた叔母夫婦との時間がとんでもなく幸せだったということだ。自分が好きなものを他人が好きになる瞬間が私にとっての幸せなのである。

試合が始まるとさらに会場の熱が上がる。歌に指笛にブブゼラに、頭がおかしくなりそうなくらいうるさい。あと、とにかく野次がすごい。知らない方が幸せだなと考えあえて意味を聞かないでいるよく聞く汚い言葉たちがカナダ代表のプレーに対して永遠に飛び交っている。右隣のカップルの女の子の方は彼氏そっちのけでカナダ側のファールにガンガン野次っていた。男はもちろん子供たちもおばあちゃんも容赦無く野次を飛ばすその景色は私にとっては異様な光景で正直ちょっとというかだいぶ怖かった。どっちがいいという話ではなく、サッカー愛や熱量、応援をするということに対する認識が日本とは根本的に違うんだなということがわかった。一方で左隣では選手目線でガチ見する私にお構いなく、「今なんで盛り上がってるの?」「退場した人はもう戻ってこれないの?」「あの22番が上手だね!!」と素人丸出しの質問を繰り返す叔母。ピッチまですごい遠いのにひたすら写真を撮り続けるその夫。二人ともずっとニコニコしていた。サッカーを知っていようといまいと、会場の雰囲気に身を任せ眼下で繰り広げられる選手たちのプレーひとつに一喜一憂する。これぞ世界中の人を虜にするエンターテイメントだと改めて実感し、この感覚を日本にいる家族や友達ともいつか一緒に味わいたいと強く思った。

叔母夫婦とわたし

試合はとても面白かった。結果は1-0でコスタリカの勝利。カナダの選手が前半で一人退場したこともあったが、圧倒的なホーム感を作り出したサポーターの力とW杯出場のために後がないコスタリカ代表の気迫が呼び寄せた勝利だった。私自身も生での観戦はあまり経験がなかったしあれほどの会場や熱狂の中での観戦は初めてだったので、ありきたりではあるがやっぱり生は違うなというのが一番の感想だ。あと、ケイラーナバスを生で見れたことも最高の思い出だ。(欲を言えばカナダ代表のデイビスも見たかったけど。。)

ちなみにそれからコスタリカはアメリカを含む残り2戦を全て勝利し予選を4位で終えて6月のニュージーランド代表とのプレーオフに望みを繋いだ。カナダは1位で歴史的なW杯出場を決め、次いでメキシコ、アメリカも出場を決めた。コスタリカ代表がW杯出場を決め街が熱狂する6月を楽しみに待ちたい。

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