女子サッカーの話をしよう

サッカー

女子サッカー140年史 闘いはピッチとその外にもあり
スザンヌ・ラック
実川元子=訳

  • まえがき
  • 第1部 女子サッカー史
  • 第2部 新しい時代へ
  • 第3部 変革のとき
  • 提言 飛躍にむけて
  • 謝辞
  • 日本サッカー小史 訳者あとがきにかえて
  • 年表
  • 選手名索引

これは女性たちがつくってきた女子スポーツ競技の歴史の話である。だが、核に置いているのは、よりよい競技にするための提言である。

まえがき より

 この本は英国のガーディアン紙とオブザーバー紙で「女子サッカー特派員」をつとめるスザンヌ・ラック氏の著書を、翻訳家の実川元子さんが訳し、昨年11月30日に刊行された。
 読み始めたのは3週間ほど前。私の誕生日に父がプレゼントしてくれ、実はこの本自体は11月下旬頃から手元にあった。それ程前に入手しておきながら、今頃読み終えることになったのは、W杯に夢中だったという理由では不十分だろう。その理由を読後、はっきりと自覚することになるのだから。
 それは、私自身が、女性の歴史を知ること、向き合うことに、自覚か無自覚か苦手意識や怯えを持っていたからである。
 ずっとずっと、”なんとなく”知っている(つもりでいる)。女性は何百年、何十年と闘わなければならなず、闘いの終わりが今もまだ見えないこと。今まさに第4波フェミニズムが起こっていること。MeToo、KuToo、他にも私の知らない闘い(運動)が、世界各地で行われていること。そういった情報を知らなければと思う自分と、知るのが怖い自分。恥を忍んで言うならば、知ることで嫌な気持ちになりたくない、やるせなさや無力感で傷つきたくない自分が確かにいた。だけどいつかはちゃんと知りたい、知らなければならないと思う自分もいる。
 この本は、そんな情けなく、臆病な自分に別れを告げる一歩のために、私の手を握ってくれた本だ。あなたは一人じゃないと声をかけ続けてくれた。読んだ後、本当にそんな気持ちになった。
 女子サッカーはここ数年で誰の目にも明らかに、進化を遂げている。新たな歴史を刻んでいる。
なぜ急速な変化が可能となったのか、ずっと不思議だった。わかりやすい見出し、キラキラしたニュースは届くが、なぜ?どんなふうに?、がわかる情報に辿り着くことは困難であった。
 しかし、この本を読むことで合点がいった。なぜ?を語るには、女子サッカーの歴史を100年以上辿らなければならないのだ。ネットニュースだけでは到底手に負えない。それほどに果てしない。
 そんな中出会ったこの本は、私が抱いていたあらゆる疑問に答えを差し出し、女子サッカーの未来と、一読者である私の未来へ、新たなクエスチョンを明示してくれた。
 女子サッカーに関わる人はもちろん、女性にこそこの本を読んでほしい。きっと計り知れない勇気をもらえるだろう。また、それと同じくらい二世紀以上なかなか変わりきれない社会に、うんざりもするし、憤らずにはいられないだろう。言語化し難い、出会ったことのない感情が、ページをめくる毎に湧き上がり、目は次の文字を見ているのに字が読めないこともあった。
 それでもなんとか読み進め、最後の提言に辿り着いた時には、女子サッカーの未来を考えたくなるはずだ。他競技に励む人や、スポーツにあまり関わりがない人だとしても、平等な社会の実現を願わずにはいられないだろう。それほどに、この本の登場人物たちの言葉と行動には、どんなに綺麗で美しい言葉を羅列し賞賛しても、し足りないほどの感動と勇気をもらえる。
 一人でも多くの人にこの本を読んでほしい。まずは女子サッカーに関わる方、特に私ぐらいの若い方にこそ読んでほしい。そんな願いを込めて、ここからは本の内容を紹介していく。(次ページへ)

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