W杯コスタリカ戦への展望

 先日W杯の大陸間プレーオフが行われた。私が現在住んでいるコスタリカが日本のいるグループEの残り1枠をかけ、ニュージーランド代表との試合に臨んだ。当日は学校が休校になったり、会社でも試合が行われる数時間は休みという大統領令が出るなど、国中が大注目の1日となった。家の近所でもほとんどの人が代表のユニフォームを見に纏い、今か今かとキックオフを待ち侘びていた。

結果はというと序盤早々に決めた1点を守り切り、1ー0でコスタリカが勝利した。テレビやSNSでも大盛り上がりで歓喜に包まれた1日となった。

日本と同グループとあってコスタリカ代表はどんなサッカーをするのか、どのくらい強いのか、日本からも注目が集まっているだろう。そこで、こっちに来てからコスタリカ代表のW杯予選の試合をいくつか観てきた私が感じたことを整理してみたい。

私がこっちに来てから観ることができたのは北中米カリブ海予選決勝ラウンドの、

対メキシコ(0-0引き分け/A)

対カナダ(1ー0勝ち/H)スタジアムで観戦https://karenencostarica.com/2022/03/31/%e3%82%b3%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%aa%e3%82%abvs%e3%82%ab%e3%83%8a%e3%83%80-w%e6%9d%af%e4%ba%88%e9%81%b8-%e8%a6%b3%e6%88%a6%e6%97%a5%e8%a8%98/

対アメリカ(2ー0勝ち/H)

そして今回のプレーオフ、対ニュージーランド(1ー0)である。

どれも一回見ただけなので、あくまで大雑把な印象論であるということを承知の上でこの先を読んでいただきたい。

まず、いくつかの試合を観てのコスタリカ代表に対する一番の印象は、

「なぜか負けない」「なぜか勝ってしまう」である。

特に観てきた試合が予選で上位にいる相手との対戦ということもあり、どの試合も基本的には主導権を握られ、内容的には相手の方が上回っていたと総括されそうなものばかりだった。ではなぜ負けていないのか、勝つことができたのか。

大きな特徴は、「守備の堅さ」だ。しかしこの「堅さ」というのは多くの人が想像するものとはやや違う。連動したプレッシングや洗練されたゾーンディフェンスがあるわけではない。個々のボール奪取能力が秀でているとも言い難い。「堅い」と感じるのは、「ペナルティエリア内でのシュートブロック」この一点である。とにかく最後シュートに対して足が出てくる。複数の選手が身体を投げ出す。さらにそこをくぐり抜けてシュートを打てたと思ったら、最後に守護神ケイラー・ナバスが立ちはだかる。冗談抜きで私が観た全試合でナバスのビッグセーブがあった。それも複数回。

実際に予選の順位表を見ても、コスタリカの8失点(/全14試合)というのは、1位カナダの7失点に次ぐ二番目の失点数だ。(2位メキシコも8失点)対照的に、得点数が上位陣に大きく突き放されたのがプレーオフに回る大きな要因になったと言えるだろう。

ニュージーランドもこの守備の堅さに苦しめられた。開始早々にスローインから3バックのサイドを突かれあっさり失点してしまったのは不運だったが、その後は立て直し、ハーフスペースを活用したボール保持と前進、トップの空中戦の強さを生かしたシンプルな攻撃で決定機を作り出し、得点は時間の問題に思えた。前半先制後から後半の途中まではニュージーランドが押し込み続け、たまにコスタリカのカウンターという半面ゲームだった。

ニュージーランドの雲行きが怪しくなって来たのは、後半途中二人の選手交代を行った辺りからだろうか。ボールを持てている、ゴール前まで迫れているからこそ点が入らないことに焦りが出てきたのかもしれない。審判の判定に、ニュージーランドの選手が感情的になる場面が増えてきた。前半、ファールによりVAR判定で同点弾を取り消されたことへのフラストレーションも蓄積されていた。その様を見て私はコスタリカ行けるな、と感じた。こうなるとコスタリカ人は狡猾だ。ファールの誘い方やアピールが上手いのは、テレビで見たり実際に一緒にプレーしたりして感じているコスタリカ人の特徴である。判定がどうなろうと大袈裟なアピールで試合を止めることで相手のペースを崩しストレスを与える。ニュージーランドの多くの選手がイライラし冷静さを欠きはじめたのは表情を見れば明らかであった。

ニュージーランドのゴールまでの迫り方はなかなか面白かった。体格の良さを生かしながらもそこだけではない欧州サッカーのような崩し方も多くみられた。今後勝負を決められるようなタレントが一人、二人と出てきたら強豪国になるかも知れない、そんな可能性を感じさせるサッカーに私は感じた。対するコスタリカは堅守速攻と一言でまとめられなくもないようなサッカーで一発勝負をものにしたが、攻守においてチームとしての明確な規律、戦術は無かったように感じる。

コスタリカは、ゴールを守り点を取ってW杯への切符を手にした。このシンプルさというか、掴みどころのなさが日本代表にとってやりにくい相手になるかもしれない。こちらにきてから逆に日本代表の試合を観ることができていないので的外れなことを言ってしまうかも知れないが、スペインやドイツのようにチームも個も戦術や特徴が分かりやすく対応策が立ちうる、かつ思い切り挑戦できる相手よりも、コスタリカのように掴みどころのない勝たなければならない相手の方が難しい試合になる可能性は十分にある。失点をしないこと、90分間冷静であり続けることが勝利へのマスト条件になるだろう。勝てる相手だとは思わない方がいい、というのはコスタリカに住んで半年以上経つがゆえの愛着が入ってしまっているのだろうか。

ここまで好き勝手に分析してみたが、所詮はただの想像と期待であり11月の結果を待つしかない。何を言いたかったのかというと、私レベルの分析力を優に上回る日本代表スタッフと選手たちがどのようにコスタリカと戦うのかがとても楽しみということだ。

あんなに攻めていたのになぜか勝てなかった、ということにはなりませんように。

最後に、

コスタリカにはケイラー・ナバスがいるということだけは絶対に忘れてはならない。

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